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COLUMN

2023.03.01

日本における新リース会計基準の影響は?

コンサルティング事例の方でIFRS新リース会計基準(IFRS 16)の導入例を解説しておりますが、ここでは、セール・アンド・リースバックにより売却益は引き続き計上できるかについて考察します。従来、IFRSにおいてもセール・アンド・リースバックにおいて、リースバックがオペレーティング・リースであれば、売却益の計上が可能で、多くの会社で本社ビルなどを使ったファイナンス兼一時的な益出し手法として利用されました。ただし、リースバックがファイナンス・リースと判定されると売却益は全額が繰延処理され一時的な利益は認識できませんでした。IFRS 16の適用後は、リースバックが使用権としてオンバランスされることになり、それに伴って売却益のうち使用権資産に対応する部分は繰延られ、リース期間に渡って認識されることになりました。これはセール・アンド・リースバックを一体として見た時に、経済的実態として売却されたのは最後に貸手に残る残存価値部分のみであるという考え方と言うことができます。一方、ほぼ同時期に類似の使用権モデルを採用した米国会計基準では、セール・アンド・リースバック時の売却益を全額即時認識することを認めています。ただし、リースバックがファイナンス・リースの場合には、当初のセールそのものを認めない規定を採用し、セール・アンド・リースバック取引全体がファイナンス取引として会計処理されます。リースバックがオペレーティングであれば売却益を全額即時認識することを認めるのは、セール・アンド・オペレーティング・リースバックの場合のセールが収益認識基準の規定を満たす収益取引であることを重視し、セールとリースバックをある意味別々に捉える見方をしているということです。ただし、リースバックがオペレーティングなのかファイナンスなのかの実態判断は依然として実務上の課題となるでしょう。現在、IFRS 16をモデルとして開発されている日本の新リース会計基準において、リースバックがオンバランスされるのは既定路線と言えますが、審議の中でセール・アンド・リースバック時の売却益の取り扱いは1つの論点となっています。今後公表される新リース基準がどのような立場をとって、売却益の認識を認めるのか認めないのか、非常に注目されるところです。