2023.03.01
米国においてもエンロン事件が起きるまでは、議決権の過半数を保有しないSPEの連結を求められることはありませんでした。しかし、2001年にエンロン社が非連結のSPEの損失により倒産したことを契機に議決権以外で支配されている事業体を連結する新たな会計モデルの検討が開始されました。連結外の事業体で発生した損失で企業が倒産しては投資家を守ることが出来ないからです。米国財務会計基準審議会(FASB)は、2003年に解釈指針書第46号(FIN46)を公表し、変動持分事業体(VIE:Variable Interest Entity)モデルという新たな連結判定モデルを導入しました。これにより議決権モデルでは連結できないSPEの連結に道を開きました。変動持分(Variable Interest)とは、期待損失の一部を負担する、または、期待残存利益の一部を享受する経済的持分ですが、それは持分投資に限定されず保証契約や管理報酬、デリバティブなども含まれます。FIN46ではSPEの多くがそうであるように議決権によって支配されない事業体をVIEと定義し、VIEはその主たる受益者が連結すべきこととしました。この結果、議決権比率が数パーセントしかなくても、その事業体の成功または失敗に最も影響ある活動を指図することができる変動持分保有者がSPEを連結することになったのです。不動産ファンドにおけるアセットマネージャーが一つの例です。2003年公表のFIN46は現代会計学の金字塔ともいえる基準だと思いますが、当時はまだ例外規定があり、サブプライムローン問題に端を発するリーマンショックが契機となって2009年に例外規定が削除され、ようやく現在のようなSPEの連結が実現しました。米国基準のみならずIFRSでも、変動持分事業体モデルに類似した連結ルールの導入により、連結総資産が大きく増加することになり、またSPEの開示も大幅に拡充されました。しかし、それまでに様々な経済スキャンダルにより投資家が被った損失はあまりにも大きかったと言わざるを得ません。このように経済環境や取引が変わるとその経済実態やリスクを投資家に開示するため、今までの常識では考えられなかった会計基準が出てくることがあります。日本の会計基準ではまだ導入されていませんが、会計基準の国際化が加速していますので、今後の動向に要注意です。